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妻を想う夜【01】

時の刻みは私の心中とは無関係に過ぎ去り、岩崎と約束した土曜が訪れました。それは私達夫婦にとって、互いに別々の場所から相手を想う切ない一日でもあるのです。

由香里と岩崎は、私鉄沿線の駅の近くで待ち合わせをしています。以前、彼はその近くに住んでいたらしく、懐かしいバーがあるから由香里に紹介したいとのことでした。

二人は暫く一緒の時間を過ごしてから、予約してあるホテルへ入る予定です。
由香里は泊まらず、夜遅く家に帰ります。妻が泊まるか否かについて、私は彼女自身に決めさせました。

妻は、岩崎と二人だけで一夜を過ごすことに対して、少なからず不安を感じているのでしょうか。それとも、独りで妻を待つ私への気遣いなのでしょうか。

私の手から離れた由香里が、男と二人だけの場所で愛し合うことへの葛藤と嫉妬は、日ごとにその深みを増します。一方、それとは真逆に、言葉に置き換えることの出来ない胸の昂ぶりが心の中を幾度も交錯したのです。

私だけでなく由香里自身も、様々な迷いと期待を秘めて今日までの時を過ごしたのでしょう。彼女は昼頃から時折ひとりで寝室に入り、音を立てずに少しづつ今夜の準備をしていました。夫に対する彼女の後ろめたさが、岩崎と逢う支度を見せまいとしているのでしょう。

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しかし私は、普通の妻を装う由香里が、体の奥にある欲望の種火に苛まれ続けていることを知っていました。真夜中に何度か寝返りをうち、その度に微かな溜息を漏らしているのを聞いていたのです。

私は傍らで眠るふりをしながら、妻が秘かに自慰に救いを求める姿を待ち続けました。
先日、私に気付かれぬように息を潜め、自らを慰める彼女の切なさに魅せられたことだけが理由ではありません。抑えきれない性の欲望に苛まれる儚い妻の側で、自分自身を慰めたかったのです。

結局、その理不尽な望みは叶えられませんでした。しかし、私が付けた欲望の種火が由香里の中に残っていることは間違いありません。私は、身勝手な情愛が彼女に与えた罪深い仕打ちに心を昂らせながら、隠れて身支度をする妻を慈しんだのです。

これまでに私は二度、岩崎に寝取られる由香里の傍らで夜を過ごしています。
他人と結ばれる妻の姿を目の前にし、身が震える恍惚に浸った私であっても、寝取られる夜の辛さに変わりはありません。
妻が男と交じわり合うことによって、彼女の美しさが深みと彩りを増すと信じていても、胸が張り裂けそうな切なさは私を苛み続けるのです。

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今夜、私のいない場所で二人が愛し合うことが、これ程までに狂おしいことだなんて…
傍らでその姿を見つめる以上に、独りで待つ仕打ちが残酷だなんて…

夫として妻を想い、ひたすら彼女の帰りを待ち続けることへの覚悟が、今になってもまだ揺らぎ続ける自分自身に苛立ちと焦燥がつのります。

私は胸の詰まる空間から逃れるように、由香里を家に残したまま一人で近くのカフェに行きました。
窓際の席に座り、今夜の準備をしている妻を想いながら外を眺めていると、私と同じ年頃の夫婦が楽し気に店の前を通り過ぎていきます。二人の笑顔は、互いに満ち足りた生活を送る幸せに包まれていました。

他人の夫婦と比べることに何の意味もないことを判っていながら、私達にとって二度と戻らぬ過去を見せつけられる辛さが込み上げます。

あの二人には決して受け入れることの出来ない私達夫婦の関係…
他人と愛し合い、精を注がれる妻の美しさを知らぬまま過ごすだけの夫婦生活…

それが私の本心なのか、心からそう思えるのかは、自分自身に対するあまりに冷酷な問いかけなのかも知れません。

私は岩崎にメールを送りました。

―  今夜、由香里をよろしくお願いします。
―  避妊の約束だけは、どうか絶対に守って下さい。

愛する妻の体を抱く男に宛てたメールは、他人の子種による妊娠から逃れるための哀願でした。

―  川島さん、もちろん判っています
―  でも、もし由香里さんが中に欲しいと言ったら
―  どうしましょうか

返信されたメールは、私の目を疑うような内容でした。今まで岩崎は私を弄ぶような態度を取ったことはありません。
私が慌てて返事を打ち込もうとしたとき、彼から再びメールが届いたのです。

―  先程のメールで気を悪くされたら謝ります
―  由香里さんがそのようなことを望む筈がありません
―  でも、その可能性が僅かでもあると心配されるなら、
―  それもまた寝取られる葛藤の中で味わう悦びです
―  川島さんなら、もうすぐ判る筈です

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自信に満ちたその文面は、私の心を不快にするよりも、彼に対する歪な劣等感を呼び覚ますものでした。
言い表すことの出来ない無力感と屈辱を抱えながらも、それでも岩崎が決して私を蔑んでいるわけではないことを知っています。
私の性癖を理解し、その願いを叶えるための道筋を教え導いてくれたのは彼であり、由香里の理性を大切にしながら解きほぐしたのも彼なのです。

今の私にとって、自分の願望と想いを正直に告白出来るのは岩崎しかいません。彼の呪縛は私達夫婦にとって、欠くことの出来ない必要悪となっていたのです。

由香里が出かけてしまう前に、もう一度彼女の姿を見たい…

私は店を出ると、足早に家へと向かいました。
由香里にしてみれば、他人の一夜妻として出かける姿を見られたくはない筈です。私はそれを知りながら、せめてもの慰めを妻に求めていたのかも知れません。

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妻を想う夜【02】

私が家に帰った時には、既に由香里は出かける準備を終えていました。
品の良い清楚な色調の服は、今の彼女自身が最も岩崎に見て欲しい姿なのでしょうか。それを思うと、自分が見えない何かに追い立てられる脅迫感に駆られます。

由香里は、私が戻る前に家を出ようとしていたに違いありません。それは愛する妻が他人によって淫らに染まる姿に魅せられた夫への裏切りでした。彼女にしてみれば、岩崎と愛し合うために外出する姿を隠すことが、僅かばかりの贖罪だと思ったのでしょう。その行為が、私が自らの存在を打ち消してでも手にしたい悦びを蔑ろにすることを、妻は気付いていないのです。

まだ由香里は判ってくれていない…
他人に妻を寝取られる切なさに隣り合う至福の満たしを…

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私はカーテンを閉じたリビングで妻を背後から抱きしめ、心の中で無言の問いかけを繰り返しました。

教えて欲しいんだ… 岩崎の手によって脱がされるための下着を身につけたとき、自分の罪深い姿を鏡で見て何を思ったのか…
他人の元へ愛する妻を送り出す夫と、それを受け入れた自分に対して、どのように言い訳をしたのかを…

残酷な呟きを心の中だけの言葉に浮かべ、由香里の香りを求めて首筋に顔を埋めました。断ち切れない未練と、止めどない妻への情愛が、立ち尽くす体の中を何度も行き交います。手に伝わる妻の温もりが、私にとって最も大切な存在の儚さを訴えかけているように思えました。

そうしている間にも、岩崎と約束した時の訪れが迫ります。妻は苛責と葛藤から逃れようとして、私が抱きしめる腕に手を重ねました。互いの中に込み上げる不貞の魅惑が、二つの鼓動に絡みながら昂ぶります。

由香里は罪悪の責苦を隠すように不釣合いな笑みを取り繕い、私の腕から離れると寝室へコートを取りに行きました。

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リビングに残された私は、ソファーに置かれた妻のハンドバックを手に取ったのです。奥の隅には銀色のラミネートに包まれた幾つかのコンドームが忍ばせてありました。
それは由香里の体を、岩崎が放つ白濁液との受精から守る儚い膜に過ぎません。彼は私との約束どおり、この避妊具を自分の精で満たし、私の妻が岩崎に愛された証として彼女に持ち帰らせるでしょう。
きっとその「証」は、妻が他人と交わる姿を傍らで見つめることの出来ない私にとって、身を裂かれるような激しい嫉妬に苛まれた心を癒す慰めとなってくれる筈です。

由香里は、そんな私の願いをどこまで受け入れてくれているのだろう…
不貞にまみれた危うい恍惚を知ってしまった妻は、どんな想いで罪深い「証」を私に差し出すのだろう…

私は胸の奥まで深く息を吸い込み、間近に迫る被虐の時を待ち焦がれたのです。

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妻を想う夜【03】

間もなく妻は、普段とは違う短いコートを着て寝室から出てきました。

「もう時間だから… 行ってくるね…」

それは消え入るように微かな声でした。由香里は顔を伏せ、私を見つめようとしません。私は黙ったまま小さく頷きました。

彼女にとって、時が近づくと共に込み上げる罪悪感と、不貞にまみれた眩い恍惚への期待の狭間から逃れるには、一刻も早く家から出る他は無いのです。

「キッチンのテーブルに今夜の御飯を置いてあるから… 時間が無くて簡単なものしか作れなかったけど…」

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由香里は岩崎と会う間際まで、妻としての家事を果たそうとしていたのでしょうか。私は思いがけない言葉に驚きを感じました。
他人と性交渉をするために出かける準備をしながら、その帰りを待つ夫の食事を用意するなんて…

妻にとって、それはあまりに残酷な務め苦だった筈です。彼女なりの贖罪の気持ちからなのか、自分自身に対する苛責を少しでも和らげようとしたのか、私には推し量る術がありません。
私にとっては、キッチンに用意された食事が痛々しいものに思えたのです。

玄関のドアを開ける妻の後ろ姿を、私は慈悲と愛しみの目で見つめました。

愛する妻が他人に寝取られることを承知の上で見送るなんて…
元はと言えば、私の身勝手な願望が全ての始まりなんだ…

ドアから差し込む外の光が由香里の輪郭を浮かび上がらせると、やがてその扉は彼女自身の手によって静かに閉ざされました。夫としてかける言葉も見つからないまま、妻は私の手から岩崎の元へと委ねられたのです。

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彼女にとって、岩崎と愛し合う二人の時間は、私だけの妻から一人の女に戻る一夜を与えてくれる筈です。精悍で猛々しい茎で貫かれながら、私からはでは得られない性の悦びに身悶えることでしょう。

それは夫である自分にとって、叶えられない恋に打ちひしがれるよりも、遥かに辛くて苦しい虐げに他なりません。愛おしい由香里の肌を他人の舌が這いずり、艶かしい蜜液の滴る膣の奥に、欲にまみれた亀頭が幾度も押し入るのです。

清楚の奥に隠れた由香里の淫らさを、鎖のような理性の呪縛から解き放ちたい…
そんな由香里を今まで以上に愛し続けたい…

冬の早い夕暮れが部屋の中を包みます。私は灯りをつけることすら忘れ、岩崎の元へと向かう妻への想いをつのらせたのです。

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プロフィール

川島 ゆきひと

Author:川島 ゆきひと
夫である私の見ている前で他人と体を重ね合わせ、すべてを受け入れる妻の姿…
夫である私にすらまだ見せたことのない露わな妻の姿…

30代になった私たちが寝取られや夫婦交換で体験した様々な出来事、いろんな方との出会いを、このブログに書きたいと思います。

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